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たまちゃんの出来事


③妻がガンになったとき

たま(妻)から彼女の病気が癌であることを告げられたとき。

それは去年のことだ。たまが自分のブログに書いていたごとく、ぽちも「さすがに凍り付いた」。だが厳密には「凍って」いたのはほんの一瞬で、次にはありとあらゆる思念が頭の中でえらい音をたてて渦巻きだした。

後悔・不安・怒り・・その他もろもろが、さしあたり「恐怖」の2文字に集約されていく。大きな黒い口がいきなり、目の前に出現する。ぽっかりと。

「おまえの人生、自分が主人公のつもりでいるんだろうが、なんでも思い通りにコントロールできると思ったら大間違いだ」

黒口野郎のあざけりが聞こえる。

前にも、こいつに出くわしたことはある気がする。たぶん、生きていくうえでその存在に畏怖の念を忘れてはならないのだろう。かと言って恐れおののくのではなく、それでもいいことを信じて、せいぜい謙虚かつ前向きに生きることができれば。そう頭では分かっていながら、なんの準備も対処もできない自分に腹が立つ。

たまからそれを知らされた翌日、バクバクバクバク、変な心臓のまま仕事に取り組みながら、なんとか隙をみつけ、収拾のつかない渦巻き状態の自分の頭に無理矢理、別の導線を差し込んだ。「たとえ俺がどんなにパニックを起こして苦しんだところで、なんの役に立つ?それでたまの癌が治癒するのか。とにかく、自分は何ができるのか、なにをすべきか考えよう」

まず、たまが余分なことに神経を遣わず、治療にのぞめるようにすること。そして出来る限りたまを笑わせること。とっても馬鹿みたいだが。
ぽちから見て、たまは至極真面目な人間だ。自分を律して、あるべき姿で生きようとするタイプ。だがそれだけに、自分を解放するのは上手ではないようにも思える。(逆にたまから見れば、ぽちは自分を解放しっぱなしの野良犬ということになるのだが・・・)ひとつのことにフォーカスすると、そこにはまってしまい、安易に「ま、いっか」とはできない性格かもしれない。気質的に癌になりやすい人、なりにくい人がいるとするならば、おそらく、前者。それ以外にたまが癌に見舞われなければならない理由なんて、僕は見つけられない。それでも理由としてはひどく不十分で、到底納得できるものではないが。
僕のそれとは比べモノにならないくらいの恐怖や不安、混乱がたまの中にはあるはずだ。彼女が「怖い、怖い」と言っているとき、いっしょになって「怖いね、怖いよね。でも頑張ろうね」と言ってそれを分かち合うのも、ひとつの有り様かもしれない。でも僕の役目は違うような気がした。たまと彼女の母親があまりにも深刻なそれと向き合っているとき、僕までそれにシンパサイズしてしまっては、家の中は暗くなり過ぎるんじゃないか。救いがないのではないか。ましてたまの性格では、僕が少しでも落ち込んだそぶりを見せたりすれば「ごめんねぽち君」などと逆に気遣いさせてしまいかねない。それはあまりにも駄目だろう。
笑うことによって免疫力が向上し、場合によっては癌細胞が縮小したり増殖の速度が低下したりするという研究もある。考えてみれば自分らは変な生き物だ。「思いつめる」だけで病気にもなれるし、「ああ、いやだなあ」と感じ続けて胃に穴を空けることもできる。ならば、彼女の免疫力を低下させないためにも、僕には僕の役回りがあるのでは?苦しみや不安を取り除くなど、及びもつかないが、少なくとも空気が暗く澱みかけたとき、ひと風吹かせる。少しでもよい方向にいくように。その可能性をちゃんと見ていられるように。もし、かろうじて自分に人間としてのパワーというものがあるのなら、それくらいの役には立って当然だろう。ふだん要らんことにあんだけエネルギー注いでんだからさ。

しかしやれやれ、なにをすべきか、と必死に考えて、こんな程度か。情けないね。
それからしばらくの間、夜寝ているたまの額やお腹に手をやっては、やはりこんなことを念じずにはいられなかった。「たまの癌を消してください。それが無理なら、大きさを半分に、それも無理ならたまの子宮癌をぽちに入れ替えてください、肺癌でいいですから。お願いします。そういう魔術、もしくは薬を知っているなら売ってください。貯金はたいしてありませんが、いくらだろうと働いて返済します」
by pochi_cb | 2005-04-27 00:13
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